5月に「谷川岳にトレッキングに行かないか」と声がかかった。
若い時から登山は好きで、以前勤めていた会社の労組では青年部が活発で、「こけ山岳会」というクラブに山好きの若者が集まっていた。私も所属し、丹沢の主脈縦走、尾瀬、八が岳、白馬、この近くでは武甲山も何度も登った。年末には、会が中心になって丹沢山麓で恒例の「忘年山行」を行なった。青年部中心に20〜30人ほど参加し、星空を仰いで徹夜で飲み明かし歌ったものだ。(写真をクリックすると大きくなります)
しかし、議員時代も含め30数年登山をしていない。初心者同然で、70歳を超えて不安だったが、6月議会には少し間があったし、意を決して行くことにした。
家を出るときの天気はまあまあだったが、現地の天気予報は下り坂で、案の定、土合に向かう途中から雨が降り出した。とにかく、土合の無人駅で一服しながらどうするか決めることにした。
平日なので駅には一人もいない。待合室は意外に広く清掃がゆきとどいている。しかし、この冬の遭難者の写真と捜索協力の張り紙が山の厳しさを物語っていた。
仲間が突然「あっ!あんなポスターが」と指差した先に、「自衛官募集」のポスターが貼ってあり、現実に引き戻された。
安倍政権が、集団的自衛権容認を閣議決定するという事態が切迫していた。私たちは、6月議会には、容認反対の「意見書」提出も検討しなければとも考えていた。
改憲を主張する大学教授が、「閣議決定は容認できない」として立憲主義が根底から崩されることに危機感を表明し、同時に、「これが実施されれば自衛隊への応募は減る。その結果徴兵制になるだろう」と発言していた。
この教授が改憲論者だけに「徴兵制」を肯定した発言とも解されるが、いずれにしても「立憲主義」を破壊してはばからない安倍内閣の暴挙を批判していることだけは確かである。
今までも、山奥のバスの待合室等にまで自衛官募集の張り紙が貼られていることは珍しくなかったが、「集団的自衛権容認の閣議決定」が政治の焦点となっている時だけに、待合室では政治談議になり、「意見書」提出で頑張ろうと決意した。
さて、肝心のトレッキングだが、雨は一向にやむ気配はない。とにかくロープウェイで天神平まで上った。しかし、雨はさらに強まっていて、当日は土合の宿舎に泊まり、翌日小雨の中を一の倉沢に向かってひたすら歩き、入り口にたどり着いた。結局、当初の目的達成はできなかったが、雨中のマイナスイオンを思い存分吸い込み、沢の残雪が解けて濁流となっている湯檜曽川を眺めながら帰途についた。
6月議会に提出した「意見書」は否決されたが、闘いはこれからである。また、今回の谷川行きをきっかけに、登山へのチャレンジ精神に火が付いた。
吉岡しげき議員
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