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『渡されたバトン さよなら原発』を観て

13年8月16日

 1969年のある日突然住民の前に突き付けられた原発建設の話。立地地域(新潟県巻町)の土地はどんどん値上がりし、あげくの果てにはお寺と墓地まで町の土地にされ売られそうになる。金に糸目をつけない国と電力会社の姿が見えるようだ。町は受け入れようとし、住民は賛成派と反対派に分かれ家庭内まで対立が持ち込まれるような状態になる。

 こんな時スリーマイル(1979年)とそれに続くチェルノブイリ(1986年)の原発事故が起こり、町には衝撃が走る。「住民投票を求める会」が作られ、1回目の投票率は過半数に満たず不成立。2回目には90%近い投票率と6割以上の反対を勝ち取る。この間の町民一人ひとりの気持ちの変化が感動的。四半世紀に及んだ闘い、住民投票と言う選択はとてもよかったと考えさせられた。

 3.11の地震とそれに続く津波により福島の原発事故が起こった時、現地の人々は来るべきものが来てしまったと思ったはずだ。そして巻町の人々は自分たちの選択は正しかったと思ったに違いない。しかしこの国には今も50基以上の原発がある。3.11の後全ての稼働を止めたものの国と電力会社は再生可能エネルギーへの道より何が何でも原発再稼働へと進んでいる。原発はゼロしかありえない。

 映画『渡されたバトン さよなら原発』を観て、私は巻町の人々のバトンをしっかりと受け取らなければと強く思いながら会場を後にした。

柳町 吉村絢美

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